Under Your Skin

[R18]

「それ」
「これ?」
「そのとなり」
「りょーかい。あとは?」
「んー、いちばん上の棚の、右から三分の一くらいのとこにある、赤い背表紙の…」
「このへん、みんな赤じゃん」
「『望郷篇』って書いてあるやつ」
「膀胱ヘン?」
「バーカ」

呆れたような表情を浮かべてみせるカカシ先生を見おろしながら、壁一面にひろがる本棚に取り付けられたスライド式の梯子のうえで、片手に抱えた本を持ち直す。
黒い本が一冊と、緑の本が二冊。
どちらも古めかしい布張りの表紙で、どっしりと厚みがある。

「ちょっと重くなってきたってばよ…」
「置けばいいじゃない。そこに仮置台があるでしょ?」
「台?あ、これかー」

よく見れば梯子の一端に、二十センチ四方ほどの台が三箇所、等間隔に取り付けられている。
そこに三冊の本を置き、四冊目の赤い本も乗せて、ふうと息を吐く。
便利だな、とおもってから、これを作ったひとの顔をおもいうかべる。
オレには考えもつかないような、ぬかりのない気遣いのできるひと。

「ヤマト隊長ってホント細けえよなー」
「なにそれ」

くすくすと笑いながら、もう一冊、と先生が書棚を指差す。

―― 壁いっぱい、床から天井まである本棚って憧れだったんだよね。だから今回ワガママ言って作ってもらったんだけど、俺じぶんの足がこんなんだって忘れてて… ――

オレをこの書斎につれてきた先生は、車椅子のうえで首をかしげてみせた。
いくつか届かない本があるんだけど取ってくれないかな、とモソモソ頭のうしろあたりを掻きながら。

―― あいつもバカみたいに俺の言うとおりに作るから。あいつも俺の足のこと忘れてたのかねえ… ――

先生はそういって笑ったけれど、そんなわけないことはオレにもすぐ理解できた。
梯子に本の仮置台をつくるなんて細かな気遣いするひとが、足の不自由な人間の手の届く範囲を考えないはずがあるもんか。
これはきっと、わざとなんだ。
先生はたぶん、放っておいたら不自由な足でいることにすら甘んじてしまう。
忍として居られないなら、動けなくたって一緒だと。
だからこそ隊長はわざわざこんな天井まで届く本棚を作って、先生のリハビリをする「理由」のひとつにしてもらおうとしたんじゃないだろうか。
いちばん上の棚の本だって軽々取れるようになるくらいまで先生が動けるようになるのを、信じていると伝えるためにも。
そして先生も、隊長のそんな気持ちはちゃんとわかっているんだろう。
口に出しては言わないくせに。

胸が苦しくなる。
ぎゅうと心臓を掴まれているみたいだ。
これはいったいなんだろう。

先生が、生きて戻ってきてくれさえすればいいとおもっていた。
それだけで十分だとおもっていたのに。

オレの居ないところで先生は、ヤマト隊長とどんなことを話すんだろう。
どんな声で。
どんな表情で。

「もうちょい左。上から二段目の……おーい、聞いてる?ナルトー?」
「え?ああ、聞いてるってばよ、これ?」
「そのとなりのとなり」
「オーケー。あとは?」
「ん、もういいよ」

ぜんぶで五冊の重たい本を抱えて梯子を下る。
床に降り立っても先生の頭の位置はオレのずっと下だ。
車椅子に腰掛けた動かない両脚の裾先から覗いているのは素足で、細長い足指のちいさな爪は青白く、触れればきっと、ひやりと冷たい。

「なに?」
「あ、いや……本もうこれでいいんだよな。どこに持ってく?」
「じゃあ、寝室まで運んでくれる?」

くるりと方向を変えた車椅子の後について、本ばかりが詰まっていた部屋を出る。

すこし広めの廊下にはまったく段差がなく、目立たないほどにさりげなく手すりがつけられている。
玄関のスロープも、キッチンの低いシンクも、書斎の本棚以外はなにもかも、先生が座った体勢のままで生活していくのにまったく不自由ないように作られているようだった。
廊下の突き当りの部屋の引き戸をすいと開けて入っていく車椅子の後姿を追いかけながら、ヤマト隊長のどこを見ているのかわからない、でもきっとなにも見逃すものなどないのであろう物静かな目線が頭をよぎって、腹の底がざわめく。

「そこに置いておいて」

先生の指差す先に、読書灯だけがぽつんと乗ったサイドボードがあった。
やや低めのベッドはシングルよりも幅がありそうだったけれど、何の飾りもなくシンプルだ。
窓のあるのと反対側の壁に、クローゼットらしき扉がひとつ。
そのほかにはなにもない。

よいしょ、と呟く声に振り返ると、先生がベッドの上に移動したところだった。
手伝いを申し出るまでもなくスムーズな動きは、車椅子の座面の高さとベッドの高さがまったく同じだからこそなのだろう。
そんなところまで考えてあるのか。

紺色のベッドカバーのうえに投げ出された先生の足の裏が見える。
土の上など歩いたこともないのじゃないかと馬鹿げたことをおもうほどに真っ白な皮膚に、土踏まずの曲線がかすかな影をつくる。

「…ナルト?」
「え、あ…っと、じゃあ、オレ、そろそろ帰るな」
「うん、今日はいろいろ助かったよ」
「また来るってばよ」
「ん」

ふ、と沈黙が落ちる。
なぜだか先生の顔を見返せなくて、視線をさまよわせたところに真珠粒のような先生の足指が並んでいる。
そこからも無理やり視線を引き剥がし、ぎこちなく背を向ける。

「じゃ、な」
「ナルト」

やわらかな低音が、呼び止める。

「なに?」
「電気消していってくれる?」
「本、読まねえの?」
「今日はやめとくよ」
「…そう」

壁際にあった電気のスイッチをパチンと消す。
暗くなった部屋のなかで、窓のあたりだけが薄ぼんやりと青白い。

「おやすみ、先生」

ドアの取っ手に手をかける。
ナルト、と背中に声がかかる。

「………待っててくれて、ありがとう」

闇に溶けてしまいそうな、ちいさな呟きが耳に届く。
頭のなかで、なにかがぶつりと切れた。
大股で四歩戻って、暗がりに手を伸ばす。

そして捕まえた先生の襟元を引き寄せて、深く深く口付けた。






触れたくて仕方がなかった。
どこもかしこも余すところなくすべて。
上顎の裏をなぞってその奥へ。
見つけ出した先生の舌を掬いあげるようにからめとり、その濡れた温度に鳩尾が震える。
圧し掛かられてバランスが取れないのか窮屈そうに先生が身じろぐのに不安を煽られて、片腕をつかんで拘束し、ベッドに押しつける。
ナルト、と言いかける先生の唇を塞ぎ、歯列をなぞって再び見つけた舌を咬む。
首筋から肩、胸と骨格を確かめるように撫でおろし、シャツの裾から手を入れる。
頬や指先は冷たかったのに、衣服につつまれていた肌にはぬくもりがある。
ビクリと震える体を逃さないように、脇腹から肩甲骨のほうへと腕を差し入れて、背面から細い肩を掴む。
先生の骨の動きが、体温と共に腕に伝わってくる。
もっと直接触れたい。
先生に馬乗りになったまま上体を起こして一息に長袖Tシャツを脱ぎ、剥ぎ取るように先生のシャツも脱がす。

なにもかも女の子とは違う体だった。
細く見えてもきちりと筋肉の張った胸と腹に、いくつもの傷跡が散らばっている。
素肌を撫でおろし、古傷らしき皮膚の凹凸を見つけるたびに、そこへ舌を這わす。
肩口にひとつ、右胸にひとつ。
先生が身じろぎするのを押さえつけたまま、脇腹に斜めにはしる傷へ舌を伸ばす。

「ナルト、手、離して…。腕痛いよ」

頭上から降ってきた声に、顔をあげる。
薄闇のなかで、先生の表情はよくわからない。

「……逃げないから」

ちいさく低い囁きに、押さえつけていた両腕を見おろす。
ドクリ、と心臓が鳴る。
躊躇いをのこしたまま、おそるおそる手を離す。
ふ、と息をついた先生が、痺れを取るかのようにぱたぱたと宙で腕を振る。

そのまま伸ばされた両手が、オレの頭を抱えこむ。
そしてひやりと冷たい指先が、ひどくやわらかく髪を撫でた。






左脇から始まる傷は、臍のすぐ横まで伸びている。
先生は声をあげない。
でも密やかな呼吸音が、オレの舌や指先が触れるところどころで、止まる。
その箇所を頭に焼き付けながら、そこばかりを丹念に唾液で濡らし、甘く噛む。
オレの髪に差し込まれた先生の指先に、力がこもる。
息を詰め、吐き出すリズムが乱れはじめる。
力の入らないらしい下半身はだらりとベッドに投げ出されたままなのに、その中心が熱を持っているのが伝わってくる。
布地が邪魔だ。
下着ごとズボンを引き抜いて、立ち上がっていた中心に指の背を這わせてみる。
固くなった軸の、先端部分だけが柔らかい。
その弾力ある感触を舌先で味わってみてから、飲み込むように全体を口に含む。
く、と微かな呻きをあげた先生が、引き剥がそうとするように後頭部の髪を掴む。
その指を宥めるように片手で押さえて、もう片方の手で脇腹あたりを撫でさすり、口中に含んだものの形を確認するように舌を這わす。
窪んだところに沿って舌を移動させていくと、下腹あたりがヒクヒクと痙攣する。
塩気のある味が口のなかに広がってくる。
どこが気持ちよかったっけ、とじぶんの体の記憶を探りながら、根元から先端までのやわらかな皮膚を唇で幾度も食み、舌で舐めあげ、また全体を口中に含む。
先生が息を詰めたまま、身をよじる。

「離、して、ナル…っ」

後頭部の地肌に先生の指先が痛いほど食い込むのを無視して、巻きつけた舌で扱くようになんども上下をくりかえす。
引き離そうと抗っていた指先が、ふいにオレの髪から離れる。
くう、とくぐもったちいさな呻きが頭上であがる。
そのとたんに、口のなかが粘りのある苦味でいっぱいになった。




口のなかの粘りを脱ぎ散らかしていたじぶんのTシャツに吐き出して唇を拭い、ケホケホとすこし咳き込む。
まだ喉奥に苦い味が残っているが、不思議と不快感はなかった。
見おろしたシーツのうえに、先生が横たわっている。
薄闇のなかでぼんやりと発光するかのような白い体はくたりと力が抜けていて、ひどく無防備だ。
胸元だけが、まだ荒い呼吸に上下している。
眺めているだけで、頭のなかがクラクラとしてくる。

やがて口元を覆ったままだった片腕が持ちあがり、気だるげにオレを指招きする。
開かれた右目が、僅かな光を反射してきらめく。

「おまえは?」
「え?」

近寄ったオレのジーンズの腰元に、先生の冷たい指先がかかる。
カチャ、とベルトが外される。

「手がいい?挿れる?」
「……いれる?」
「ああ、男は初めてなのか」

器用な指がフロントのボタンを外し、ジッパーをさげる。

「先生は、男としたことあるの?」
「んー、まあ、若気の至りで」

ヒップポケットあたりをつかんで引き下ろそうとする動きに従って、窮屈だったジーンズを脱ぐ。

「……ヤマト隊長と?」
「なんであいつの名前が出てくるのヨ?……あ、」

我に返ったような声をあげた先生が、上半身を起こす。

「言ってなかったかもしれないけれど、ヤマトの子どもを妊娠したっていうのはモノのたとえだからネ。本来人類のように雌雄に分かれた哺乳類では俺達のようにXYの染色体を持つ雄側ではなくXXの染色体を持った雌側のみが子孫を体内で育成することができるわけで…」
「なんかわかんねえけど男が妊娠しないってのくらいはオレだって知ってたっての!」
「ホントに?」
「ホントにって、そこで疑うなってばよーっ!!」

オレの雄叫びに先生がくすくすと笑う。

「ずっと昔のことだって」

なんでもないことのように言いながら、先生がオレの下着のウエストに手を掛ける。
すこし見おろすような位置にある先生のこめかみに、髪が数本はりついている。
かすかに汗の匂いがして、脳味噌がぐらりと揺れる。

「隊長じゃないなら、誰としたの?」
「誰でもいいでしょ、おまえの知らない奴等だよ」
「ヤツら?複数形なんだ?」

ウエストのゴムをつかんだまま、先生が困ったように首をかしげる。

「なんでそんなの気にするの?やめる?」

すこし薄めの唇が、疑問形のかたちのままで止まる。
いったいどんなヤツらが、これに触れたんだろう。
ふつふつと、頭のなかが沸騰しはじめる。

「ヤダ」
「え……ちょっ!」

ぐいっと掴んだ先生の膝を、折り曲げるように押し開く。
バランスをくずした先生の背がベッドに落ちる。

オレはもっと先生を知りたい。
どうせガキだけど、まだぜんぜん追いつけないけれど、それでもオレはカカシ先生のいちばん傍までいきたい。

「挿れるの、ココ?」

尻のあいだの窄まったところへ手を伸ばして撫でる。
先生がぐっと息を呑む。

「ちょっと待ってナルト、やっぱ、やめ…っ」
「ヤダっつったろ。どうすんの?固いよ。濡らす?」

足のあいだにかがみこんで、舌先を押し付ける。
ずりあがって逃げようとするのを、腰をつかんで引き摺りおろす。
ぎゅうと窄まったところはちいさく固く、とても入れるようにはおもえない。
女の子だったら触ればすぐに濡れて溶けてくるのに。
それともどこか濡れはじめるようなキモチイイところがあるんだろうか。

固く窄まった部分を舐めながら、指先であちらこちらをさぐるように触れていく。
先生の軸のさきが濡れていく。
そこが気持ちよくなるのは、わかる。
でもこっちがよくなるところはどこにあるんだろう。
この中にあるんだろうか。

指先をたっぷり濡らして、窄まりに押し込む。
くうう、と先生が呻く。

「痛い?」

見上げたさきで、先生がかぶりを振る。
隠すように重ねた両腕のせいで顔は見えないが、触れあう肌の温度がどんどん上昇しているのを感じる。

このままずっと指先を入れていったら、先生の心臓までも触れるんじゃないだろうか。
そんな馬鹿なことを考える。
実際はようやく人差し指の第一関節までが入っただけだ。
狭いし、キツイ。

「ホントにここ挿れるの?ムリじゃね?」

おもわず呟いたら、重ね合わせた腕が震えるように揺れ、半開きの口端が覗く。
湿らすように唇を舐め、なんどか息を吐き出して呼吸を整えるようにしながら、掠れかかった声が囁く。
女の子じゃないから濡れないよ、濡らして、すこしずつ広げて、それで…

「……来、て」

消えいりそうなそのひとことだけで、達してしまいそうになった。




汗が滲んでくる。
ありったけの集中力をかきあつめて、入り口を慣らす。
浅い息を吐きだす先生は苦しげで、ちっとも気持ちよさそうじゃない。
なのにやめられない。
ちいさな呻き声にさえ、煽られる。

二本の指先をつかって、唾液で濡らしては押し広げるのを繰りかえしていくうちに、多少ほぐれてくるのがわかる。
朝顔の螺旋のような蕾を、反対側から開かせていくイメージだ。
すこしずつ、奥へ奥へと指先をすすめていくうちに、とつぜん鋭い声があがり、腰が痙攣する。

「え、なに?痛い?」

かぶりを振った先生が、ぎゅうと片手で口を塞ぐ。
その手首を掴んで、口元から外させる。

「や、…んんっ」

先生痛かったらちゃんと言って、といいかけたことばが、喉元で止まる。
こぼれ落ちたのは、初めて聞いた、甘い甘い響き。

「せんせ、もしかしてココ、キモチイイの?」

指先に神経を集めるようにして、さっき触れたあたりを探る。
耐えかねるように腰が揺れ、先生の軸先からたらりと雫があふれる。

「へええ、そうか、キモチイイのかあ…!」

湧きあがってくる笑みを隠し切れないままもういちど指先を蠢かしたら、掴んでいた腕を振りほどかれて、ガツンと殴られた。

「痛ってえー!」
「も、いいから、来い」
「え、だってまだ」
「来い、って」

もういっぱつ殴られそうになるのを辛うじて避けて、埋めていた指先を抜く。

「んじゃあ、痛かったらホント言ってくれってばよ…」

ほぐした場所にじぶんの先端を当てておおきく息を吐き、ぐっと押してみる。
先端がめり込む。
痛いほどの圧力に締めつけられて、頭のなかがキンと尖る。
なんだこれ。
焼ききれそうだ。

きつく奥歯をかみ締めて最初の衝撃をやり過ごしたらしい先生が、うっすらと眼をひらき、浅い呼吸を繰りかえす。

「せんせ…苦しい…?」
「だいじょ、ぶだって、いってる、なんども、いわす、な」

睨みつけるように見あげる先生の視線に促されて、大腿をかかえこみ、さらに押し込む。
先生の白い体が仰け反る。
無防備に晒された首筋に顔を埋めながら、もっと奥まで腰をすすめる。
引きちぎられるのかとおもうほどキツい締めつけに、なにも考えられなくなってくる。
鼻先に先生のなめらかな頬が当たる。
湿った感触に舌を伸ばせば、かすかな塩分の味がする。

「せんせ…せんせ…」

カカシ先生のなかに入ったんだ、と実感したとたんに堪らなくなって、本能のままに腰を引き、強く打ち付ける。
喉奥で呻いた先生が、オレの肩口に隠そうとした顔を強引にこちらへ向ける。
合わせた唇の向こうであがる先生の呻きと悲鳴を飲み込んで、舌を絡める。
抱きしめた体が熱い。
押しこみ、引き抜くたびに鳩尾に溜まっていく快楽が強すぎて苦しい。
せんせい、とうわごとのようになんども呟く。
肌に先生の爪が立てられるのを感じる。
チクチクとした痛みが快楽を煽る。
腕のなかの体が痙攣するように震える。

「う、わ…っ!」

そのまま津波のように押し寄せてきた快感の波に流されて、頭のなかが真っ白になった。






頬をくすぐっているのが先生の髪だと気がついて、だるい頭をめぐらす。
鼻の頭にやわらかく触れたのは先生の耳たぶだ。
繋がったまま重なり合った腹の辺りには、べったりと濡れた感触がある。
おもいきり体重をかけて下敷にしてしまっていたのを済まなくおもいながらも、いつもは体温の低い先生の体がいまはオレとおなじくらいに熱いのに気がついて、無性に嬉しくなって首筋に顔を埋める。
頚動脈を通して伝わってくる鼓動が、まだ早い。
心臓に触れることはできなくても、オレはいま、先生のなかだ。
先生のいちばん近くに、いる。

「先生、愛してる」

おもわずそう呟いたら、視界の端に気だるげに投げ出されていた白く長い腕が持ち上がった。
そのままオレの頬をグイイとつまむ。

「イデデデデ…ちょ、せんせ!」

わめき声をあげるオレを、ひそりと笑う気配がする。
そしてオレの頬をつまんだ腕はまた、ぱたりと力なくベッドに投げ出された。

Fin. (20110810)






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